掲載した建物は300を、写真点数は600を超えていますが、取材しながら掲載できなかった建物も数多
くあり、今後これらの整理をするとともに、まだ相当数あるだろうと思われる取材漏れの建物も発掘し
なければなりません。又、今回取り上げられかった社寺建築も諏訪地方に数え切れない名建築が残され
ており、こちらも地道な調査を必要とします。この本のきっかけとなった「SUWAらしき宝さがし」
を引き続き行い、それに充てられればと思います。

 「S UWAらしき宝さがし」とは諏訪の各地を歩き、諏訪の特長を持つ素晴らしいものを建築に限ら
ず発見しようという活動ですが、その貴重な建物などが年々姿を消し、そのスピードが最近加速度をつ
けて増していると感じていました。そこで50周年を期に、壊される前にせめて写真にだけでも残してお
きたいと今回の企画になりましたが、この半年の間に掲載された建物のいくつかは既に解体され、不本
意ながら発行前から貴重な資料となってしまいました。


 諏訪人は多くの文化に曝されながらも、それを咀嚼してSUWAらしさを創り上げてきました。この
一冊にまとめることによって、先人たちの創造力に満ちたアイデアが見えてきました。また、そのアイ
デアは諏訪人らしく合理的で、その多くは現在の建築においても充分使えるものであります。
 現在の諏訪地方はもっと広範な文化に曝され、それが咀嚼されることなく丸呑み状態で諏訪地方に溢
れています。時代とともに生活の形態が変化し、古いものが新しいものに替わるのを止めることは難し
いことだと思います。しかし、我々諏訪の建築士が先人達に倣い、諏訪人の諏訪人による諏訪人のため
の建築を心がければ、SUWAらしさを取り戻すことができるのではないでしょうか。

この本がそのきっかけになることを願っています。